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いちサラリーマンが「ハッカーの技術書 IoTソフトウェア無線の教科書」を出版するまでの道のり

 先日発売になった「ハッカーの技術書 IoTソフトウェア無線の教科書」について、いちサラリーマンの私がどのようにして書籍出版に至ったのか記しておこうと思います。これから本を書きたいという方の参考に少しでもなればと思います。

IoTソフトウェア無線の教科書

IoTソフトウェア無線の教科書

  • 作者:上松 亮介
  • 発売日: 2020/03/27
  • メディア: 単行本

きっかけ

 そもそも、本を書きたいなあというモチベーションはどこから生まれたのかというと、所属している会社の出版物である某ロードマップ2019年版の一部を執筆する機会をもらったことが自分自身の中での一つのきっかけでした。そこで20ページ分くらい書いた時に意外と書けるんじゃないかという変な自信を持ってしまったことにつきます。

 そんな風に思っていた時、ちょうど一年前、IoTSecJPで登壇した後、こんなことをtwitterで呟いたことが実際に本を書くことになった最初のきっかけでした。

何気なく呟いただけなのですが、これに黒林檎氏がレスをくれました。

https://twitter.com/r00tapple/status/1108174297422430208(なぜか今は表示されない。)

このことがきっかけで黒林檎氏にデータハウスの方を紹介してもらったことが、この本を出す最初の1歩目でした。  

 その後、出版社の方に、書籍案を説明する機会をもらったので、先にそのための資料を作成しました。 といっても既に作りためていた資料とかを合体させて、自分の書きたいもののイメージを膨らませてみました。この時はpptの資料です。IoTSecJPとかで使った資料が元になってます。まだ、書籍化した時のプロトコルを全て決めていた訳ではありませんでした。この時点で、LoRaWAN、Sigfox、LTEは半分くらい、書く内容は出揃っている状態でした。ここまでの積み重ねで作っていた資料が非常に役立ちました。 

 当日は、出版社の方と黒林檎氏にWeb会議でppt資料を見せながら説明。即座に書くことが決まりました。 簡単に書くことが決まったので拍子抜けした記憶があります。妻に話したところ、騙されているんじゃないかと言われる始末。

 この段階では、半年くらいで書き上げて、2019年中には出版するという方向で話していました。

発売までの流れ

最初のつぶやきから丸っと1年で出版することになりました。

2019年4月

出版社の人と初コンタクト。企画を説明。書くことが決まりました。この時点では確定ではないが、編集の方の中ではほぼ決まっている様な形でした。

2019年5月

 出版社の方に、とりあえず1章分くらいどんな感じになるのか見せて欲しいと言われたので、ゴールデンウィークに書き始めました。ネタがガッツリ揃っていてサクサク書けそうなLoRaWANネタから書き始めました。ネタが揃っていたので、1章分をGWの数日で書き上げることができました。20ページ分くらい。1章分を送付した後に、出版社から執筆ガイドラインや印税の話がありました。出版社から、特にこうして欲しいなどの指示はなかったので、そのまま続きを書き進めることに。
 ここで出版社によっては契約書の締結とかあるんでしょうが、今回は特に締結することなく進めることにしました。(特に深い理由はなく、面倒だからというだけです。)

2019年6〜10月

 途中、諸事情により執筆が止まる状況もありましたが、毎月大体2章分くらいのペースで執筆していきました。執筆環境、執筆時間の確保については後述。
 書き進めながら題材も決めていき、最終確定は夏くらいでした。Wi-Fiも当初は入れようかなと考えていたのですが、結局SDRのテーマとしては微妙だったので外しました。

2019年11月

 大体全体を書き上げた後、同僚にレビューしてもらって修正を反映させて、初稿を入稿。同僚のレビューはもう少し早い段階で入れも良かったなあと少し後悔。

2019年12月

 初稿を入れた後、その後のスケジュールが出版社から連絡がありました。この段階で3月中旬〜下旬に発売という予定が決まりました。

 IoTSecJPに登壇した際に宣伝。


 中旬に出版社から初稿のゲラが到着。書籍のデザインが反映された紙の状態です。このゲラに対して赤字で修正箇所を入れていく作業。年末年始も使ってガッツリ修正。ここでは全体的にかなり修正をかけました。いくつか追加したい内容もあったので、節丸ごと追加もしています。

2020年1〜2月 

 年明けに初稿赤入れを返送して、下旬に再稿版のゲラが到着。ここから1週間で再度赤入れ作業をしました。ここが最後の修正タイミングだったので、また何人かにレビューをしてもらい、修正を反映しました。この段階のレビューで結構ガッツリ指摘をもらったので、なかなかキツかったです。2章はほぼ半分くらいの文章を書き換えました。もっと早くに見てもらえば良かったと再度後悔。
 さらに妻(非技術系)にも丸々レビューをしてもらい、日本語のおかしな箇所を指摘してもらいました。バックグラウンドのない人が読んで分からないところを指摘してもらえたので、これも非常に良かったです。

↓赤入れはこんな感じ。
f:id:tansokun920:20200201010315j:plain
 
 再稿版の赤入れを返送後、編集の方の校正作業があり、そこでのフィードバックがいくつか(20くらいは指摘あったかな)あって、その修正対応で最終的な形になりました。その後、タイトル、サブタイトル、オビの文言の調整があり、この段階で書籍タイトルが確定しました。

2020年3月 

 カバーデザインが初旬に完成。さらに詳細な出版日がここでようやく確定。Amazonに自分の名前の入った書籍のページが出来て感動。そして3/27に発売!! 

 

執筆時間の確保

 執筆は、主に土日を使いながら書き進めました。平日の夜も使いましたが、まとまった時間があまり取れず、効率が悪かったです。特に、書く前に調べたり、実証したりする時間も必要だったので、まとまった時間を取ってやる方が、今回は進めやすかったです。

 例えば、土曜に1日標準仕様書の調査、日曜にその内容を執筆。次の土曜に、SDRを使った評価環境構築・実践、日曜にその内容を執筆といった感じです。

 ただ、そんなうまいこといかない時も多々ありましたので、実際はトラブルシュートだけ平日の夜思いついたときに試すとかはしていました。そんなこんなで毎月2章分書き上げては入稿するという形を取りました。

 私は妻と2歳の子供がおり、妻も働いているため、土日を丸々使うことは家庭的には自殺行為なので、自重はしていました。が、結局土日を丸々使わないと時間を確保できなかったので、土日は家庭を顧みずに執筆時間に使いました。また、子供の体調が悪くなって会社も休まなきゃいけないこともあって、執筆に時間を取れなくなり1ヶ月程度執筆を止めた時期もありました。

 時間の使い方は反省することが非常に多いですね。

執筆環境について

執筆環境はいろいろなパターンがあります。

PC
  • ノートPC:自宅以外の作業はこれ
  • iMAC:自宅ではこれ
  • iPad Pro:たま〜に使う程度。同期ミスって1日分の作業が消えてからは恐ろしくて使えなくなった。
場所
  • マンションのワークスペース
    自宅のあるマンションの共用施設にちょっとしたワークスペースがあり、非常に集中できるので、かなり使い倒しました。自宅の部屋だと子供が乱入してくるので、結局夜中子供が寝た後にしかできないので、土日はほぼワークスペースを使いました。(他の住民からはSDRとか接続して変なことしている人にしか見えなかっただろうなと思う。)
  • 自宅
    主に平日夜くらいですね。
  • カフェ
    これも平日の夜会社帰りに寄る場合ですね。赤入れ作業の時は結構使いました。都内で場所広く取れて、人少ないところを日頃から探しておいてよかったです。年末年始、実家に帰った時は致し方なくという場合とかも。
  • 会社
    会社でやる場合もありましたが、仕事との境目が難しいので、執筆時はできる限り会社外でやる様にしました。
執筆ツール
  • 執筆:Word (おじさんなのでなんだかんだでこれが一番使いやすい。)
  • 図の作成:Power Point 
  • クラウドicloudで共有 

費やした金額

 書籍を書くために参考とした書籍、雑誌、ツールなどの機材はいろいろありますが、個人的に投じた金額は大体20万円くらいです。本業で使っている機器も使わせてもらいましたので、そこは含まれていません。元から持っているPCなども含んでいません。

費やした時間

これは正確には分からないのですが、執筆自体は半年間の全ての土日分くらいは使っているかなと。ただ、執筆以前に調べて資料にまとめていたりしたものが多数あるので、この期間外の時間も含めると相当な時間を使っていると思います。

書き終わってみて  

 本を書くことになる前は、いつか書けたらいいなあくらいの思いでしたが、いざ書くことになって始めると、こんな内容で良いのかと思いながら書き進めていました。出版社の方がやたらとポジティブに反応してくれていたのが救いでした。

 書き終わってみて、色々と感じたこと、反省したことありますが、ざっとこんな感じです。

  • 日本語の統一感なし、誤りはどんなに注意していても残る。なので最初は細かいことは気にせずどんどん書く。
  • 多くの人の目でレビューしてもらうのは本当に大事。(これやらなかったらかなり低品質だったと思う)
  • 再度勉強し直すことになるので、非常に良い機会。
  • 家庭の時間とのバランス・調整はめちゃくちゃ大事。
  • 既にネタが手元にあれば、それを広げて勉強がてら本を書くのもアリ。

 

ということで、そんな感じで書き上げた本書をどうぞ宜しくお願いします。

現在、家に篭ることも多いかと思いますので、そんな時の暇つぶしの一つにしていただければ。

IoTソフトウェア無線の教科書

IoTソフトウェア無線の教科書

  • 作者:上松 亮介
  • 発売日: 2020/03/27
  • メディア: 単行本
 

 

 SDRの入手はこちらの記事もご参考に。

www.tansokun920.com